僕の部屋の近所には、三件のコンビニがある。
箸本は「生活感がない」とよく言われるが、しばしばコンビニに行きます。何を買うかって?確実なのは煙草と烏龍茶ですね。僕は一日に一定量以上の烏龍茶を飲まないと発作が起きる。
便宜的に、三件のコンビニを近い順からA、B、Cとしよう。
Aのメリットは、深夜でも現金が下ろせる点だ。僕は現金を持ち歩いていないと不安なので、これは非常に助かる。
ちょっと前、二川校の帰りに小澤先生と某ファミリー・レストランに行き、ファミレスなんだからクレジット・カードは使えるでしょと油断していて、「いいよ、誘ったんだから俺が出すって」とか偉そうなこと言ったものの、僕の切り札JCB(Jesus, Come on, Baby!の略、ではなく、普通のJCBカード)が使えず、小澤先生に払ってもらったときの、あの衝撃。忘れられない(小澤君ほんとごめん)。ああいう悲劇的な事態を回避するためにも、僕はある程度の現金を持ち歩いていたい。
Bにはできる限り行きたくない。
深夜、結構な確率で働いている店員がいるのだが、この男がムカつく。
「コンビニの店員がムカつくって言ったってタカが知れてるでしょ」と思われるかもしれないが、いやーほんとにムカつくぞ。あたかも「人をムカつかせて生きないと天国に行けない」という宗教の一派を信奉しているかのごとく、この男はことごとく僕をムカつかせる。じゃあ行かなけりゃいいじゃないかという話だが、僕のキャメル(ラクダの煙草)が置いてあるコンビニが近くにはないのだよ、このB以外。
そして、C。距離でいうと一番遠いんだけど、僕は基本的にここを選んで行くようにしている。
深夜、高確率でホーク(仮)という店員が出現する。この仮名に特に意味はない。強いて言うなら顔が鷹っぽいからである。この人が、いい。
年齢は僕の父親よりちょっと下かな、四十代後半?なかなかのハンサムだ。で、とにかく客によく話しかける。だいたい僕は見知らぬ人と話すのがプレッシャーで、よく喋るタクシーの運転手につかまると「勘弁してくれよ」と思ってしまうのだが、ホーク(仮)さんは非常に好感が持てる。書き始めると色々あるのだが、印象的な話を、ひとつ。
確か昨年十月の終わり頃、例によって発作を防ぐため、深夜、烏龍茶を買いに行ったときのこと。僕は釣り銭を受け取ってビニール袋をつかみ、ひとつ、咳ばらいをした。そのとき、ホーク(仮)さんが言ったのだった。
「お大事に」。
僕は「どうも」としか返せなかったが、なかなか言えないよな、と感心した。だいたい、ひとつ咳をしただけじゃないか。風邪かどうかもわからない。マスクを買ったわけでもない。そして結論から言えば、僕は風邪なんかひいていなかった。でも、そんなことはどうでもいいのである。彼だって確信があって言ったわけじゃないだろう、不確かな中で、それでも、ということなんだろう。そこがいい。
以来、煙草を除いて、僕はCのコンビニに通っている。遠回りになることもあるが、何だかそれが真っ当なやり方のような気がするのだ。僕はかなり世の中をなめて生きているという自覚があるが、自分の思う限りで、真っ当でありたい。
先日、深夜に烏龍茶(まったくどれだけ烏龍茶を飲むんだお前は)を買いに行くと、ホーク(仮)さんがマスクをしていた。これはもう確定である。任せろ、と僕は思った。釣り銭を財布に放り込み、袋をつかんで、今度は僕が言った。
「お大事に」。
ホーク(仮)さんは鷹のように微笑んだ。いや、鷹が微笑んだのは見たことないけど、きっと、あんな感じだ。
日々接する多くの人々。深く関わり合うこともなく、僕たちはただただ、通り過ぎてゆくだけだ。煙草の火を貸すだけのような間柄。それでいい。でも、そんな中で、何かひとつでも、優しいものを残しながら、温かいものを落としながら。そんな場面が、あるといい。
ホーク(仮)さん、いつもありがとう。あなたのコンビニはなかなかいいですよ。キャメルを置いていないことを除けばね。
テイク・ケア
2008年02月04日 箸本‘husky’竜也
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