ジャスト・ライク・ユー

2007年08月14日                  箸本‘husky’竜也


手紙ありがとう。


 


 あの夜、一人で校舎に残って、何度も君の手紙を読んで、正直に言うと、少しだけ泣いた。


 授業の中では絶対に見せない君の痛みが、決して真顔では言わない君の望みが、あまりにも切実で、透き通った願いが、胸に刺さって。君がどれくらい傷ついて、どれくらい……ある意味じゃ無理をして、どんなふうに生きようとしていたのか、それが伝わってきて、切なかった。


それでも僕は……講座で会ったときにはちょっとしか言えなかったけど、君の手紙が、本当に、本当に嬉しかった。僕が二十四年間で出会った全ての言葉の中でも、あれほど嬉しいものはあまりなかったと思う。


ありがとう。


 


 君は優しいから、いつだって冗談めかして話すんだと思う。相手にとって重くなりすぎないように。それが君にとって実はけっこうシリアスなものであっても、それを相手に投げつけることが、君にはできないんだと思う。


 


 手紙の中で、君は僕にひとつ、質問をした。


 きっと、「イエス」と答えるのが優しさなんだろうな。君は僕にそう言ってほしかったのかもしれない。


 弁解じゃないけど、マジで考えた。


別に「イエス」と言えば嘘になるとも思わない。そう信じればいいだけの話なんだから。事実、そう信じるべきなのかもしれない。君が「イエス」と信じられるなら、信じていい。


 でもごめん、僕には答えられない。なぜなら、君がした質問を、僕自身、自分にときどき問いかけてしまうから。で、答えは出ない。だから、たまらなく怖くなる。僕の人生において、もしその答えが「ノー」ならば、と。


もう二度と、ね。


 


 君はこれからも失敗するかもしれない。


 あるいは、僕も。


 君はこれからもズタズタになるかもしれない。


 あるいは、僕も。


 君は何かを疑い、あきらめそうになるかもしれない。


 あるいは、僕も。


 君はずっと答えを見つけられないまま、歩き続けるはめになるかもしれない。


 あるいは、僕も。


 


 わかるかな、ある意味じゃ、僕だって君と何も変わらないんだよ。


 


 でも、君よりちょうど十年長く生きてるから、ひとつだけ偉そうなことを言おう。


 人が強いのか弱いのか、僕にはわからない。強い人と弱い人がいるのかどうかもわからない。結局、みんな同じなのかもしれない。


 ただ、強くなれる場面というのは確実にある。


 嘘じゃない、慰めでもない、誓ってもいい。


ミキ、僕はちょっと、強くなったんだよ。


それを本当に見せたい相手がどこにもいないってことが、ときどき悲しくなるけどね。


 


大丈夫、君は自分が思うほど弱くない。


 別の言い方のほうがいいかな、君には弱い部分もあるが、自分でもよくわかっていないくらい強い部分も持ってる。そういうこと。


 すげー偉そうだけど、この僕が言うんだ、信じなさい。


 


 答えが出なくても、次の場面を見に行こう。引きずるということと進めないということは別物だ。僕は塾講師で、答えを導くのもひとつの仕事。でも、何ていうか、生きていくということについて、答えを出すばかりが能じゃない。そうだろう?


 


たくさん話しにおいで。


たくさん泣きにくればいい。


そんなことが何だ、君の強さとは何の関係もない。


 


 手紙の中で君が僕に言ってくれた言葉を、そのまま君に返す。


 


 悲しんで、傷ついて、ときに色あせても、それでも、全て帳消しにできるような、笑える場面を、美しい場面を、たくさん見よう。


 君には……僕たちには、きっとそれができるよ。

posted by kaitaku at 23:48 | 愛知 ?? | Comment(0) | TrackBack(0) | 箸本‘husky’竜也
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